涼しい長襦袢の決め手はやっぱり「吸水と放湿力」。初心者におすすめの夏長襦袢はコレ!

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涼しい長襦袢の決め手はやっぱり「吸水と放湿力」。初心者におすすめの夏長襦袢はコレ!

「着物でお出かけしたら、汗びっしょり! 長襦袢を洗濯機で洗いたい! 夏はいろんな素材があるけど、画像で見てるだけじゃ違いがわからない。涼しい長襦袢は、どれなの?」
そんなお悩みで、お困りではありませんか?

長襦袢の素材が異なる時、吸汗・速乾性で涼しさはどの程度違うのか。その結果、着心地にどう差が出るのか。わかりやすく見てもらうために、ここでは、一般的に初心者がもっている長襦袢8種4素材の長襦袢の生地に水を落として吸収時間を測ったり、自宅で洗濯した時の乾燥時間を計測して、吸汗・速乾性を比較してみました。

そして実際に一日過ごした後の着用感を含め、初心者に一番おすすめしたい夏の長襦袢を解説します。

涼しい着物とは?


涼しい着物とは何でしょうか?汗をかいてもさらっとしている。風通しのよいのが「涼しい着物」。

着物や浴衣は、着用したときに空気の通り道を作ります。袖や脇の下が空いていたり、衿を抜いた着方をすることが、空気の通る仕組みです。通気性の良さ=素材選びが、涼しい着物の肝と言えるでしょう。

着物を着て「暑すぎる!」体験をした方。その原因は、着物の下の長襦袢かもしれません。初心者は、譲り受けた着物や長襦袢の素材の違いがわかりません。間違いや思い込みで、春~夏~初秋に全く適さない長襦袢を着ている人を見かけます。

汗ばむ季節、着物の中で何が起こっているのか、暑さを感じるプロセスをみていきましょう。

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着物で「暑さ」を感じるプロセス

そもそも、暑さを感じるメカニズムとはなんでしょうか?気温が高くなれば暑くなるのは当たり前。不快感や暑すぎの原因は、その後のプロセス、「吸汗性」と「速乾性」にあります。この吸放湿性がスムーズであれば、衣類内を快適に保ち、汗ばむ日も心地よく過ごせますが、滞ると不快感が上がり、あせもや熱中症の心配も。

1 発汗
気温や湿度が高くなると、身体は発汗して、上昇した体温を下げようとします。

2 吸汗(=吸水)
全身を覆う着物では、汗が衣服の中で留まる時間が長くなります。かいた汗は少しでも早く吸い取りたいものです。

3 速乾(=放湿)
汗が停滞していると体温が下がらず、さらに発汗という悪循環。素材には速乾性が求められます。

これらのプロセスが、素材によってどれくらい変化するのか、違いをみていきたいと思います。一番涼しい長襦袢はどれでしょうか?
 
 

素材の特徴と涼しさとの関係~麻・絹・ウール・ポリエステル・綿


着物初心者の長襦袢を集めました。長襦袢の素材は、麻、絹、ポリエステル、ウールなどがあります。 素材別の特徴をみていきましょう。
 

天然原料から作られる植物性の天然繊維。古くから衣料として利用されている。

 

麻のメリット

麻の繊維は強く、手触りはハリとシャリ感があり汗ばんでも肌に密着しません。水に濡れると繊維力が向上するので洗濯回数の多い夏期に適している。

麻の側面と断面の写真。側面は繊維軸方向に線条が走り等間隔の節がある。 断面は多角形などで中空部分がある。(財団法人 日本紡績検査協会

  麻のデメリット

繊維が粗硬なので、敏感肌の方はチクチク感じることも。皺がつきやすい。
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動物性の天然素材。生地の表面がやわらかくなめらか。美しいツヤがあります。

絹のメリット

光沢と高級感。しなやかさ。肌へのフィット感は、張りのある麻や綿に比べると、ほっそりと優雅に見せる。しわにもなりにくい。

絹の顕微鏡写真。繭の状態では2種類のたんぱく質(セリシン、フィブロイン)からなるが、精錬によって一方のたんぱく質(セリシン)を除去して銀白色の美しい光沢を持つ絹糸が得られる。(財団法人 日本紡績検査協会

絹のデメリット

日光により強度低下、黄変を引き起こす。夏場は汗とともに、身体にまとわりつくように感じる。放湿性には優れているもの、吸水性は麻や木綿に劣る。
 
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ポリエステル

化学繊維。絹に似せた光沢を求めて開発された。着物や長襦袢では、「洗える着物」として安価に流通されている。現在、国内の合成繊維生産量の約半分を占めており、高機能の繊維が開発され、衣料品の用途を広げている。

ポリエステルのメリット

濡れても特性が変化しにくいので、容易に洗濯できる。シワにならない。天然繊維と比較すると格段に安価。

 ポリエステルのデメリット

吸湿性に乏しく夏の高湿期は蒸れて体温がこもる。冬の乾燥期には静電気が発生しやすい。紡績糸の織り編み物に毛玉が発生しやすい。
 
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ウール

天然の動物繊維。長襦袢のウールは羊毛。

ウールのメリット

弾力に優れてシワになりにくく保温性に優れている点で、冬の防寒衣料。難燃性を生かして作業服、制服等。撥水性を生かしスーツ、コート等に使用されている。

羊毛の顕微鏡写真。スケールと呼ばれる鱗片状の表皮を持っていて、このスケールが隣接する繊維との距離を広げ、糸・織編物の内部に空間を作りふくらみや保温性を持たせる効果を発揮する。(財団法人 日本紡績検査協会

ウールのデメリット

吸水性と放湿性がない。水に濡れると硬くなり、収縮(フェルト化)する。虫に侵されやすい。

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綿

水との親和性が高く、夏に適した素材。長襦袢の素材では海島綿などがある。

綿のメリット

綿は丈夫で、汗や水分をよく吸収し、耐洗濯性がよく衣料に幅広く使われている。

 

綿のデメリット

繊維の硬さを感じる。着用時の膝などの変形が元に戻りにくい。シワにもなりやすい。
 
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比較実験で使用する長襦袢のラインナップ

ポリエステル

  • 仕立て上がりポリエステル絽長襦袢(参考価格:約4,000円)
  • 仕立て上がりポリエステルの長襦袢(参考価格:約5,000円)
  • ポリエステル(シルック)(仕立て代込の参考価格:約30,000円)
  • 仕立て上がり 爽竹ポリエステル長襦袢(参考価格:約15,000円)

 

  • 麻(絽生地)の長襦袢(仕立て代込の参考価格:約40,000円)
  • 麻の長襦袢(仕立て代込の参考価格:約40,000円)

 

  • 絹(絽)ウォッシャブル加工の長襦袢(仕立て代込の参考価格:約50,000円)

 
ウール

  • ウール長襦袢(仕立て代込の参考価格:古着のため不明)

以上、8種類の長襦袢を実験対象にしています。
(注意:実験で使うのは、私物の長襦袢が対象です。新品ではないために、布の経年劣化やこれまでの洗濯回数が結果に多少影響を与えています。ご了承ください。)
  

実験1 吸水性素材別比較

着物で「暑さ」を感じるプロセスで説明した通り、汗を吸わない素材は暑さを倍増させます。汗の吸収力の目安として、長襦袢の生地にスポイトで水を落とし、完全に吸収されるまでの時間を上記ラインナップの順に、ストップウォッチで測ります。

実験方法

スポイトで5滴水をたらし、水分を布が吸収するまでの時間を計測しました。

ポリエステル(絽)の水分吸収時間:10分55秒

仕立て上がりポリエステル絽長襦袢

ポリエステルの水分吸収時間:5分43秒

仕立て上がりポリエステルの長襦袢

ポリエステル(シルック)の水分吸収時間:瞬時に吸収

ポリエステル(シルック)

ポリエステル(爽竹)の水分吸収時間:瞬時に吸収

仕立て上がり 爽竹ポリエステル長襦袢

 麻(絽)の水分吸収時間:瞬時に吸収

麻(絽)の長襦袢

麻の水分吸収時間:瞬時に吸収

麻の長襦袢

絹(絽)の水分吸収時間:1分5秒

絹(絽)ウォッシャブル加工の長襦袢

ウールの水分吸収時間:4分28秒

ウール長襦袢

以下、水分の吸い込みが早かった順番に並べます。

  1. 瞬時に吸水
  2. 麻(絽)……瞬時に吸水
  3. ポリエステル(爽竹)瞬時に吸水
  4. ポリエステル(シルック)瞬時に吸水
  5. ウォッシャブル絹(絽)1分5秒
  6. ウール4分28秒
  7. ポリエステル5分43秒
  8. ポリエステル(絽)二部式10分55秒

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実験2 洗濯後、乾くまでの時間比較

放湿性の目安とするため、洗濯した長襦袢の乾燥時間を計測します。


検証方法

麻、ウォッシャブルの絹、ポリエステル、ウールを中性洗剤で手洗いし、室内で乾くまでの時間を測っています。つるした状態でしばらく放置し、水が垂れなくなってから乾燥までの時間を計測しました。気温22度、湿度48%の日に実施。

洗濯後、乾燥までの時間(早く乾いた順に表示)

  1. …18分後袖は乾燥→50分後見頃ほぼ乾燥→2時間20分後に衿などすべて乾燥
  2. 麻(絽)…20分後袖は乾燥→50分後見頃ほぼ乾燥→2時間25分後に衿などすべて乾燥
  3. ポリエステル(爽竹)…20分後袖は乾燥→58分後見頃ほぼ乾燥→2時間30分後にすべて乾燥
  4. ポリエステル(シルック)…25分後袖は乾燥→60分後見頃ほぼ乾燥→2時間30分後にすべて乾燥
  5. ウォッシャブル絹(絽)…20分後袖は乾燥→55分後見頃ほぼ乾燥→2時間40分後に衿などすべて乾燥
  6. ポリエステル…35分後袖は乾燥→70分後見頃ほぼ乾燥→3時間10分後に衿などすべて乾燥
  7. ポリエステル(絽)二部式…袖は濡れているのかいないかのかわからない→3時間40分後に衿や見頃の晒などすべて乾燥
  8. ウール…60分後袖は乾燥→85分後見頃ほぼ乾燥→4時間10分後にすべて乾燥

  

涼しいのはコレ!5月~10月に最適な長襦袢

結論から先に申し上げると、初心者に一番おすすめしたい長襦袢は「麻の長襦袢」です。

理由は、実験の通り吸水性と放湿性に優れている点、張りのある生地が風を通し体感温度を下げてくれる点、繊維が丈夫で水に強い。自宅で洗濯が可能な点、天然素材の中で比較的安価な点があげられます。

画像:麻の長襦袢

着用感でも、汗をかいても放湿性がよく、身体に熱がこもらないのを実感できたのは、麻の長襦袢でした。夏日に一日着用した時、麻の涼しさの持続性にはかないません。上記の理由から、今夏の実験で、一番に選んだのは「麻の長襦袢」です。(麻絽も同じ特性を持っていますが、わたしは使用頻度が高いので数年着用後は肩明が裂けてしまいました…)

上記「素材の特徴と涼しさとの関係~麻・絹・ウール・ポリエステル・綿」で説明した通り、マイクロスコープの拡大写真を見ると、麻の繊維は中空。汚れが奥まで入りにくく、汚れたとしても落としやすい。また、水に強く、自宅で洗濯しても丈夫な素材であることも、麻の長襦袢を一番に選んだ理由。洗濯回数の多い夏場にはうってつけですね!

ヨーロッパでも古くから寝具やキッチンクロスとして、使用されてきた理由がここにあります。

画像:イギリス製アンティークリネン

さらに、麻という素材は、肌と麻の間にある隙間から汗が蒸発するときに、気化熱とともに体温を下げてくれる特性があります。そのため冷暖房の完備されていない時代から長く愛用されています。

麻は、天然素材なので化学繊維と比較すると値段が高め(仕立て代込の参考価格:約40,000円)ではあるものの、5月~10月までの約半年を気持ちよく着用できることを思えば、決して高すぎる値段ではないと思います。

二位、三位にくるのは、絹(絽)の長襦袢とポリエステル爽竹です。
透ける着物を着る人(絽や紗)は、絹(絽)の長襦袢をおすすめします。通気性は麻の次ですが、麻のデメリットである「シワ」が気になるのなら、絽がベターでしょう。

絽の長襦袢は、夏の着物の一番の楽しみである「透け感」を上品に味わえる長襦袢。ウォッシャブル絹(絽)の長襦袢(仕立て代込の参考価格:約50,000円)なら、家庭で洗濯できるので、気軽に着用できます。少しでも痩せて見せたい人も、絹(絽)がおすすめ。身体へのなじみがよく、ほっそり見えます。

ポリエステル爽竹は、「これがポリなの?」というひんやりとした肌触りがありました。実験では、瞬時に水分を吸収し、乾燥も早かったです。ただ、着用感は、天然繊維に劣るようです。予算が限られている方は候補に挙げられてもいいでしょう。

ポリエステルという素材は、その構造から機能を追加しやすく、スポーツウェアでおなじみ。登山用下着などでも大活躍。長襦袢としても、まだまだ進化をとげるかも。と期待を大きくしていますが、現在のところはまだしばらく、麻の愛用を続けたいと思っています。
 
 

(資料)夏長襦袢について初心者へアドバイス

夏の下着を選ぶときに考慮したい。年齢や体調や体質のこと

長襦袢だけでなく、その下に着る肌着についても考えてみましょう。

夏の着物下着に関しては、実際、いろいろな考え方があります。この記事内の「汗取りと汗出しの両立」という流れでは、下着もちゃんと着てくださいね、というスタンスですが、「なるべく枚数を減らして涼しく」と考える方たちもいらっしゃいます。体力に自信があるなら、それでもいいでしょう。

毎年、そのはざまで悩んでいる人も多いようです。自分の体質や、年齢、その日の気温、体調、上に着る着物の種類で決めてはいかがでしょうか。

上の写真は、江戸時代からのロングセラー商品「あしべ汗取り襦袢」。アンダーバストからウエストちょっと下まで植物性繊維が分厚く縫い込まれています。汗取りパットもついています。

ある呉服通販サイトの購入層分布をみると、あしべ汗取り襦袢のコメント数は数百あり、その回答者は40代以上に分布していました。

汗を放置すればより不快感の増すことをよくわかっている大人世代、特に暑がり、汗っかきに愛用者が多いです。年齢により自律神経が乱れ、体温調整がむずかしくなっている方もいます。去年と今年の体調の変化も考慮しましょう。

ネットには、「夏にこんな(分厚い)ものを着るなんて信じられない!」「太ってみえそうでいや。」というコメントも見かけます。着ぶくれてみえるかどうか…多少あるかもしれませんが、それでもわたしはこの下着のリピーター。夏の着物下着は「汗取りと汗出しの両立」がテーマですから。

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夏の長襦袢の寸法について

初心者の方の最初の夏の長襦袢は、だいたい既製品です。その理由を聞くと、夏はあんまり着ないと思うから。違いがわからないから、とりあえず、安いのにしました。とのお答え。そのせいか、夏は、衿元のはだけている人が多いです。特にバストの大きい人は身幅が合わず、はだけて当然です。

夏の長襦袢というと、浴衣と同じような感覚になるのかもしれませんが、実際、わたしは、5月~10月の間、夏の長襦袢を着用しています。カジュアル着物の場合、気温を重視(礼装はTPOを重視)するので着用期間は長く、冬物と同じ半年です。

この先何年も長持ちするものですから、ぜひ、最初の一枚から寸法の合っているものをおすすめします。

寸法があっていれば、衿元がはだけにくくなります。また、家の中では目立たなくとも、外にでると、着物が透けて寸法の合っていない長襦袢が丸見え。こんなことも避けられます。

 

ウール長襦袢、ポリエステル長襦袢の見分け方

「間違って」夏に不向きな長じゅばんを着ている人をみかけます。気温27℃の6月に、ウールの長襦袢&ウールの長着を着ている人もいました(本人は綿の長襦袢と、紬の単衣と思っていたみたいです。)素材の見分け方を知っておくと便利です。

ウール長襦袢の見分け方

写真はウールです。見慣れない方は木綿と間違ったりしますが、素材は毛糸と同じ。ざらざらした感じで、光沢感が全くありません。良く見ると毛羽立ちが見えることもあります。

ポリエステル長襦袢の見分け方

一般的にポリエステルの長襦袢は、ミシン仕立てで売られています。洋服のように洗濯表示のタグがついていることも多いです。ミシン目があったり、このタグがあれば、ポリエステルの長襦袢でしょう。表面は絹のように光沢がありツヤツヤしていますが、絹のようなしっとり感はなく、生地は軽さがあります。

生地の見分け方、その特性をよく知って、快適な着物ライフを送ってくださいね。
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かつて着物の素材は通気性のよい、天然の素材がほとんどでした。麻、綿、絹などです。

ところが最近は化学繊維が増え、通気性の悪い着物、浴衣、長襦袢を着る人が増えました。特殊な加工をしているポリエステル以外は、空気が通らず汗が蒸発しないので、蒸し風呂状態です。「柄がかわいい」「値段が安い」でも…??

着物は最低でも3枚の重ね着。そして全身を覆います。陽射しが気になる季節になったら、肌着含め、長じゅばんの素材をチェック。たかが長襦袢。されど長襦袢です。その機能性は、冬よりも夏に発揮されます。自分が心地よいと思える素材を再検討してください。

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