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小千谷縮(ちぢみ)とは?夏の着物や浴衣として着る、着回しコーデ20選と洗濯方法

お手頃価格なのに、着心地良く、おしゃれ感が抜群。筆者も十数年愛用しています。着回しやすく、着る季節も長い、夏の便利な着物です。

この記事を読めば小千谷縮がよくわかるように、初心者さん向けに小千谷縮の着用時期小千谷縮と帯の合わせ方、お手入れ方法を説明します。

目次

小千谷縮とは

小千谷縮(おぢやちぢみ)とは、新潟県で作られる麻100%の織物

はじめて夏着物に挑戦!というビギナーさんから上級者まで、ファン層の厚いのが特徴。表面がクレープ状で肌触りさらさらの麻の着物です。

お手入れは水洗いの自宅洗濯でOK。真夏は、洗いたての着物に袖を通したくなるから、水でサブサブ洗えるのは、とても魅力的です。

麻は、吸汗性、放湿性に優れているので夏には最適な素材。その上、小千谷縮の表面には凹凸があり、衣類の中にこもった熱をすばやく放出してくれる、昔ながらの「機能性衣料」ではないでしょうか。

この凹凸は、緯糸に強い撚糸を使用した麻布をお湯の中でもみこむ手技から作られています。国際的にも大きな評価を受けています。

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歴史

新潟は、1200年も前から織物の産地として知られています。

それまでは上布(じょうふ)という、表面の平らな織物(越後上布)がメインでしたが、江戸中期に布を縮ませて表面にうねりを作る方法=縮(ちぢみ)の製法が考え出されました。この製法は公開伝授されて、当時大ヒット。産量は急激に増加しました。

その後、麻織物の生産量は少なくなりましたが、昭和30年、昔ながらの原料と作り方をする越後上布としての小千谷縮は、国の重要無形文化財に指定されます。昭和50年 「伝統的工芸品」としての指定を受け、2009年にはユネスコ世界無形文化遺産登録されました。日本の染織技術としては第一号です。

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雪晒し

重要無形文化財 越後上布・小千谷縮布技術保存協会

昔からの作り方で生産される小千谷縮や越後上布には「雪晒し」(ゆきざらし)をします。雪晒しとは、オゾンによる布の低温漂白。雪と紫外線の作用により発生したオゾンが麻布に含まれる色素を分解し漂白することで、白が強調されて鮮やかになります。

新品だけでなく、里帰りの反物も「雪晒し」をすることで汗じみも汚れも落ちてさっぱり。この効果は、麻の布の特徴。約800年前から行われている「雪晒し」。そんなに昔から続いているなんて、驚きですね。

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小千谷縮のお値段

重要無形文化財の小千谷縮や越後上布は、繊細な手仕事による着物ですからお値段は高め。

流通の多い小千谷縮は、化学染料を使ったり、機械を使っているために、安価です。金額は4~6万円くらいでしょうか。

そのため、ビギナーさんでもがんばれば手の届く着物として、若い方から大人世代まで、人気の夏着物なのです。

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小千谷縮のデザイン性

Google「小千谷縮 画像」検索結果より

小千谷縮はシンプルな縞や格子が多く、飽きのこないベーシックなデザインのため、帯によって雰囲気が大きく変わります。コーディネートしやすく、飽きずにずっと着られるので、筆者も長く愛用しています。

最近は、カラフルな小千谷縮も増えていますが、どれも大人向けの上品な発色、上質さが、浴衣にない魅力と言えます。

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新しい提案!夏からはじめる「きもの生活」

最近は、浴衣を着る人が圧倒的に増えました。浴衣の次は、次のステップ「きもの」に挑戦してみませんか?

上手にコーディネートして、初夏から秋のはじめまで長く着られる「小千谷縮」はとってもお得!しかも浴衣より涼しくてお手入れも簡単。コーディネートは以下を参考にしてください。

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浴衣として着る場合、夏の着物として着る場合

浴衣と「夏の着物」とは何が違うのでしょうか?結果を先に言うと、「夏の着物」の方が格上です。

夏の着物(夏の礼装もありますが、ここでは夏のカジュアル着物に限定して説明します)は、洋服でいうと、キレイめカジュアル。別の言い方では、おしゃれ着、ふだんきもの、街着、カジュアル着物、お出かけ着とも言います。

それに対して浴衣は、昔は部屋着に相当していました。浴衣の名称は、「湯帷子」(ゆかたびら)といって、身分の高い人が入浴の時に着用していたものからきていて、それが、湯上りの着物や夜のお祭りなどに着るものへ変化し、今では外出着になったという経緯があります。

小千谷縮は、浴衣として、夏の着物として、両方の着方ができます。 厳密な決まり事はありませんが、襦袢を着るか(半衿を出すか)。足袋をはくか。お太鼓結びをするか。などで雰囲気を変え、区別しています。

 

浴衣として小千谷縮を着る場合

7月に浴衣として小千谷を着たコーデ

肌着、裾よけなどの和装下着をつけ、直接小千谷縮を着ます。帯は半幅帯です。素足に下駄。涼しそうに歩いてくださいね。

麻の着物は透け感があります。和装の下着はきちんと身につけましょう。

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夏着物として小千谷縮を着る場合

7月に小千谷を夏着物として着たコーデ

長襦袢を着てお太鼓をしめます。足元は足袋に下駄またはお草履。

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単衣として着る場合。うすものとして着る場合

さて、ここからは小千谷を着る季節のお話です。

 

小千谷縮を着る季節

「いつからいつまで着られるの?」検索した時に、わりと定義があいまいで悩んでしまった方もいるかもしれません。

そもそも、麻の着物は礼装と違ってドレスコードの問われない着物です。昔は現代よりももっと自由に、着られていました。かといって、全くルールがないわけではありません。

地域差もありますが、筆者は、単衣(ひとえ)の季節と、薄物(うすもの)の季節である、6月~9月まで小千谷縮を着ています。

単衣の季節とは、6月と9月です。単衣とは、裏地のついていない着物を指します。薄物の季節とは、7月と8月。一年で一番暑く、着物では絽(ろ)、紗(しゃ)、麻、浴衣を着る季節です。

四か月間、着物は同じでも帯や帯締めを変えて季節感を加えます。それでは、具体的にコーディネートを見てみましょう。

 

6月に単衣として小千谷縮を着る

  • 半衿ー絽
  • 帯ー夏帯
  • 帯揚げ、帯締めー夏物

 

7、8月に薄物として小千谷縮を着る

  • 半衿ー絽
  • 帯ー夏帯(6月よりも透け感の強い帯)
  • 帯揚げ、帯締めー夏物

 

9月に単衣として小千谷縮を着る

  • 半衿ー冬物
  • 帯ー冬帯(八寸名古屋帯)
  • 帯揚げ、帯締めー冬物

 

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コーディネート

小千谷縮は、単衣の着物として、うすものとして、浴衣として、三通りの着方ができることがわかりました。それではコーディネート見本をさらに見ていきましょう。

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6月の小千谷ちぢみ

  • 半衿ー絽
  • 帯ー夏帯
  • 帯揚げ、帯締めー夏物

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7月の小千谷ちぢみ

  • 半衿ー絽
  • 帯ー夏帯
  • 帯揚げ、帯締めー夏物

 

  • 半衿ーなし
  • 帯ー半幅帯
  • 帯揚げ、帯締めーなし

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8月の小千谷ちぢみ

  • 半衿ー絽
  • 帯ー夏帯
  • 帯揚げ、帯締めー夏物

 

  • 半衿ーなし
  • 帯ー半幅帯
  • 帯揚げ、帯締めーなし

 

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9月の小千谷ちぢみ

  • 半衿ー冬物
  • 帯ー冬帯
  • 帯揚げ、帯締めー冬物

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麻の特徴

麻は、丈夫で汚れにくく、水に濡れてもすぐに乾きます。綿や絹が普及するずっと前から使われ、古くから人々に親しまれていました。

麻の側面と断面の写真。側面は繊維軸方向に線条が走り等間隔の節がある。 断面は多角形などで中空部分がある。(財団法人 日本紡績検査協会

麻の速乾性や、放湿性のすばやさは、この「中空の繊維」が理由だったんですね!

しかし、デメリットもあります。固い繊維のためにしわがつきやすく、摩擦により毛羽立ちや色落ちの生じることがありますから、洗いすぎや脱水のしすぎを避けましょう。

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お手入れ~【動画あり】小千谷縮の洗い方

小千谷縮は自宅で簡単に洗濯できます。汗をかいたらその日に洗い、ノーアイロンで翌日着られます。浴衣よりもお手入れ簡単な着物です。

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洗うタイミング

筆者の小千谷縮。15年間洗濯機で洗い続けていますが、いまだ現役。

7月、8月の汗をかいた日は、その日のうちに洗っているので、いつもさっぱりと着用しています。6、9月は真夏ほど汗はかかないので、衿が汚れてきたら自宅洗濯しています。

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洗い方

 

1. 小千谷縮をたたみ、ネットへ入れます。
2. ファンデーションや皮脂汚れの気になるところは下洗い。あらかじめ中性洗剤をしみこませ、つまみ洗いしておきます。
3. 中性洗剤少量を溶かし、洗濯液を作ります。小千谷縮を入れ押し洗いします。色落ちするのでお湯は使いません。漂白剤の入っている洗剤は避けます。(汗だけ落としたいなら洗剤を入れずに水のみの押し洗い)洗濯機ご使用の場合はネットに入れ、ドライまたは弱水流洗いしますが、ていねいに手洗いした方が繊維は傷みません。長時間の浸け置きは、NGです。
4. しっかりすすぎましょう。泡が消えるまで優しく洗います
5. 着物ハンガーにかけて吊る干し。乾燥させます。繊維は、乾くときに縮みます。よく引っ張って干します。筆者は、生乾きのときももう一度、袖や衿をひっぱって伸ばしています。

注意:手洗いでも少し色落ちすることがあります。天然の繊維なので仕方ありません。色落ちや、繊維へのダメージを防ぐため、汚れがひどくない場合は、30秒から1分程度で手早く洗っています。

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汚れやすい場所

小千谷縮に限らず、着物の汚れやすい場所は決まっています。以下の個所をチェックして汚れていないか確認します。汚れがあったら、下洗い(上記洗い方:手順2)を。

  • 衿…ファンデーションの付きやすい場所
  • 袖口…皮脂汚れの付きやすい場所
  • 上半身の背ぬい付近…枕の背面の汗じみ
  • 上前…食べこぼしなど

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洗剤の種類

汗のみでしたら、水洗いでOK。洗剤を使い場合は中性洗剤を少量。洗剤のすすぎ残しにはくれぐれも注意してください、変色の原因になります。蛍光増白剤入の洗剤も避けましょう。

 

脱水の方法

軽く脱水します。脱水機にかける場合は、ネットに入れたまま短時間ですませます。脱水のしすぎは要注意です。繊維へのダメージになります。

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干し方

着物ハンガーにかけて室内干しをします。洋服用にハンガーにかけると型崩れの原因になります。退色を防ぐため、直射日光があたらないように影干しです。

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しわの伸ばし方

 

少々のしわは、ハンガーにかけ霧を吹きますと自然に伸びます。アイロンがけは、繊維を痛めたり、しぼが伸びるので厳禁です。外出先では、濡らしたハンカチを当てて手アイロン(両方の手の平ではさむ)をするか、10cm離して水をスプレーし、縦横方向へ布を伸ばすと皺が気にならなくなります。

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小千谷縮着用の際、気をつけていること

 

衿の仕立ては広衿仕立て

長襦袢を着たときに、半衿が美しく見えるのは、広衿。衿の仕立ては広衿にしてもらっています。浴衣として着るときは、衿を半分に折って着ます。

 

居敷当?裾よけ?

下着の透け予防と、型崩れを防ぐために、居敷当をつけて仕立てをする方もいますが、筆者は、居敷当をつけていません。早く乾き、手入れが楽だから。涼しそうに見えるから。が理由です。

その代わり、透け防止は気を使っています。特に、長襦袢を着ないで、浴衣として小千谷縮を着る時は、裾よけの丈を長めにします。お出かけ前は、ショーツラインが透けないかどうかの確認を必ずしましょう。

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小千谷縮の足元

浴衣として小千谷縮を着る時も、夏着物のとして小千谷縮を着る時も、「下駄」をはくことが多いです。長襦袢を着る時は、草履でもいいのでしょうけども、下駄の方が軽く、バランスがいいように思います。

 

長襦袢?半襦袢?

筆者は長襦袢派です。中途半場なところで半襦袢の裾の横のラインが透けてしまうのが嫌なので。

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麻の着物には、麻の襦袢

小千谷縮の時は、同じ麻素材の「麻の襦袢」を着用します。以前、絽の襦袢を着たことがありますが、寸法が同じなのに、袖口から襦袢が見えたり、振り(ふり)からはみ出したことがありました。和裁師さんに質問したら、「襦袢と着物は同じ素材がいいのよ。」とのこと。なるほど、と思い、それからは、同じ素材、「麻の襦袢」を着ています。

 

裾つぼまりに着る

麻は張りのある素材。絹と比較すると身体に沿いにくく、太って見えがち。裾よけ、長襦袢、着物すべて裾つぼまりに着つけ、ほっそり見せます。

裾つぼまりの着付けは、下前の褄(つま)を引き上げ、裾が身体に対して斜めになるように。

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長時間正座の時には、小千谷は着ていきません

涼しくて軽い小千谷は街歩きには向いてますが、長時間正座が続く時は、シワが気になります。シワは麻の特性なので、神経質になることはないのですが、さすがに何時間も座りっぱなしのお茶のお稽古などには、あまり着ていかないようにしていますが、それ以外は、どんな場所にも小千谷縮を着ています。

 

鏡で後姿の透け感チェック

大事なことなので、繰り返しになりますが、小千谷縮の透けに注意! 前は布が2枚重なっているため気にならなくても、後姿で下着が透けていることがあります。小千谷縮を着たら、必ず鏡で後姿もチェック。ショーツが透けていませんか? 二部式長襦袢が透けていませんか?

 

通気性のよいものを身に着ける

せっかく涼しい小千谷縮でお出かけするのですから、下着、長襦袢は、絶対に合成繊維ではなく天然繊維を!また、帯板や伊達締めはメッシュのもの。帯枕は、へちまなど、通気性のよいものに変えています。

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なるべく手洗いと、絶対陰干し!

手洗いを重ねていくと、丈は少しずつ縮みます。筆者は忙しい時、洗濯機のドライモードで(自己責任です。)洗うこともありますが、縮み防止には、ていねいな手洗いをおすすめします。それと、陰干しが基本です。

 

麻と絹の着物を一緒に収納しない

ウール、麻、木綿には虫がきますが、絹には虫はつきません。麻、木綿はたんすに入れずに別の箱に収納。防虫剤を入れて収納しています。

 

外出にはボトルスプレーを持参

麻はしわが気になる。という方がいます。さすがにずっと正座の日は、麻ではなく絹を選びますが、多少のシワは、麻らしさ。本物の美しさだと思うのです。(ポリエステルはシワにはなりません。)どうしても気になる方は、携帯用のボトルスプレーに水を携帯してください。気になるシワにシュッとひと拭き。しわは伸びてすぐに乾きます。

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今では、毎日着物を着ている筆者ですが、15年前に着付け教室を立ち上げたとき、夏用の着物を持っていませんでした。先輩に相談して、はじめて買った夏の着物が小千谷縮です。それから毎夏、洗濯機でじゃぶじゃぶ洗い、暑い夏をともにしてきましたが、今でも現役。水を通すとぱりっと元に戻り、いつまでもすがすがしい小千谷縮。この記事内でもたくさん登場しています。

汗っかきさんには、「夏に着物を着るなんて!」とよく言われるのですが、インドなど強烈に暑い地域では、ゆったりとした麻の長袖シャツなどを着るそうです。日差しから肌を守り、服の中に風を通すためだとか。その話を聞いて、日本では小千谷縮!と強く思ったものでした。麻の小千谷縮で過ごす夏。ぜひ体験してみてください。

筆者プロフィール

着物好きが高じて、DTPデザイナーから着付講師へ転身。年間約8割を着物で過ごしている。2004年より、東京都内にて生徒とのコミュニケーションを大切にした、少人数制の着付教室は現在も進化中。

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