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夏きもの汗対策☆洗えるシルクのきもの☆涼しい着心地と浴衣より楽なお手入れ方法

※この記事は2021年8月に更新されました

夏きもので気になるのは、とにかく「汗」。筆者は毎日着物を着ています。掃除したり、着物で梱包もしますから、汗は半端ありません。

いろいろと比較して、ここ数年定着しているのが、洗えるシルクの夏きもの。浴衣よりも涼しくて、お手入れも楽なの~といっても、最初はあまり信じてもらえません。

今回は、筆者の生徒さんや友人、特に「着物の汗対策、暑さ対策に悩んでいる方」に見てもらいたくてこのページを作りました。

従来の洗える着物=「ポリエステル着物」でも全然平気!という読者の方は、きっと体力があると思われるので、この先は読み進む必要はないかもしれません。

筆者がこの記事を読んでもらいたいのは、このような方たちです。

  1. とにかく汗っかき、消臭性のあるものがイイ!
  2. 着物の着心地(通気性、高級感、着ていて気持ちいい)を重要視したい
  3. 夏でも小紋や色無地をきちんと見えるものを着たい
  4. 自宅で丸洗いしたい
  5. ポリエステルのムレ感が堪えられない

(着物の購入価格など、詳細データを知りたい方は、記事の最後に掲載しました。)

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この記事で紹介している【洗えるシルク着物】について

「洗えるシルクきもの」とは、どういうものなのでしょうか?

伝統的に織り上げられた着物地+縮みにくい加工のきものです。ほとんどの小紋、紬の反物にこの加工ができます。

自宅で丸洗いできるから、クリーニングのコストが大幅に節約できます。しかも、洗濯時の乾燥が意外と早く時短。

加工技術というと、化学薬品を使用するイメージですが、化学薬品や樹脂を一切使用せず、天然シルクに水のみの、環境にやさしい加工技術なんです。

シルクの特性=やさしい肌触り、高級感、通気性を保ちながら、格段にお手入れしやすくなった新しい着物です。

 

四年間、何度も洗ってきた着物が、コレです↓↓

夏の江戸小紋に、「washable加工」をしてもらいました。反物の端に産地の表示があるのでおわかりになると思いますが、伝統的に織り上げられた絽のきものです。

今回は筆者が個人的に着用を続けている、この「絽の江戸小紋」に限定して着心地感をお伝えしていきます。

 

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洗えるシルクの着心地

2021年8月現在、今シーズンも4月ころからこの小紋を着ています。冬なのに夏日、春なのに真夏日に着用して重宝しています。(説明:市松模様は絽目がわかりにくいので、単衣としても着ています。絽目がはっきりしているものは着ません。)

台風迫る湿度の高い日と、この夏最高気温の二日間の記録をお伝えします。

 

 

2021年8月8日の記録

天気*朝から降ったりやんだりの台風特有の雨。とにかく、湿度が高い。最高気温は30℃。予報よりも雨脚が強く、肩あたりがかなり濡れてしまう。

活動*仕事日。9時~16時まで外出。移動は電車で往復2時間。雨コート着用。他教室で着物の講義がある。畳敷きの部屋で立ったり座ったりを繰り返しながら、染織の講義をする。2時間×2コマ。道中の悪天候もさることながら、とにかく一日動く。

着心地感*畳敷きの部屋で立ったり座ったりするときは、しわになりにくくてフィット感がある小紋が最適。

今日の問題は、とにかく台風影響の雨。以前は縮むのがこわくて縮緬(ちりめん)で出かけれなかったが、洗えるシルク着物は強い味方となった。

雨コートは着るが、湿度が逃げやすいので、ムレは気にならない。絽の小紋は、ほどよくさらっとしている。引き続きマスクがスタンダートな今夏。正直、夏きものでマスクは過酷だから、放湿性のある着物でないと出かけられないと思う。

 

 

2021年8月10日の記録

天気*朝からすでに30℃越え。この夏の最高気温の38℃を記録する。やや風を感じるが熱風。

活動*11時から着付け教室での指導。午後は茶道のお稽古。着物での活動時間は、11時~17時の6時間。最高気温のこんな日に限って、炭手前の当番…(炭をくべる作法がありまして、火の間近でそれをします。)とはいえ、茶道の稽古ではやはりきちんとしないと。ということで、江戸小紋をチョイス。

着心地感*短い移動距離でも、すでに大汗。直射光と反射光、全方向からの日差しを感じる。遮るための日傘が欠かせない。この気温だから当然汗はかくけども、先生のお宅へ到着して、10分ほど休んだから、すっと体温が引いてくれた。放湿と吸湿があれば、何とかなると思った。先生が茶室の冷房を効かせてくれ、お稽古はいつもと変わらず快適に過ごせた。

帰宅すると、肌着はじっとり。長じゅばんはしっとり。両方ともすぐに洗濯機へ。着物のひざ裏の汗シミを点検するが、目視で、汗シミなし。ハンガーにかけ、湿気をとばしてからたたむ。

38℃の午後に着物で外出したことは、これまであまりない。実はちょっと身構えた。

日傘、マスク熱中症予防の水分補給、余裕をもった行動計画(ぎりぎりの時間でばたばた動くのは、こういう日、危険です。)なども気にしなくては、と深く思います。

 

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洗えるシルクの機能性を充分に発揮させるために

ここで、落とし穴に注意!
下着や小物にも気を使わないと、洗えるシルクの良さは味わえません。

夏きものの下に、通気性のない長じゅばんや下着を着ていたら、意味なし。ということです。

 

夏の着物や浴衣は暑くて汗だく!?これで解消【暑さ対策15のコツ】

夏の長襦袢の素材比較。涼しいのはどれ?初心者におすすめの夏の襦袢

↑ 涼しい下着や小物についての記事はこちら。ご参考まで。

 

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洗えるシルクの洗い方

浴衣より楽なお手入れ方法を説明しますね。

浴衣のように、糊付けや全体アイロンがけの必要はありません。
記事中の絽の小紋は、衿と上前の衿下と衿のみ部分的に軽く低温でアイロンがけをしています。

ネットに入れて洗濯機弱流洗いでOKなので、ほったらかし洗濯で気が楽です。

この着物の洗濯時間は以下の通り。

 

下洗い 3分

洗濯液で洗ってすすぎ 10分

脱水機 1分弱

お風呂場でぽたぽた干し 30分

室内干し 2時間


袖や上前にアイロンをかける 10分

完全に湿気をとばすために干す

たたむ

 

できあがり!

 

 

筆者が洗う時に注意していること

  • 中性洗剤をほんの少し。蛍光剤の入った洗剤はNG
  • 洗剤の入れすぎに気を付ける
  • 部屋干しです。日光にさらすのは、絶対だめ
  • ファンデーション汚れは液体洗剤で前処理して汚れを浮かせる
  • 外出先の食べこぼしなどは、テッシュで吸い取るか、払うのみ
    (おしぼりは漂白剤で殺菌処理しているものがあるので気を付けています)
  • 脱水のかけすぎは、繊維劣化を招くので注意
  • 干している途中の生乾きでアイロンをかける。低温・当て布を使用する
  • できるだけ早く水分を飛ばすために、干す場所の換気に留意

2年間実践済み!【正絹の洗える着物】の自宅クリーニング(動画あり)洗い方やリアルな着用感を満載!

↑ 洗える着物の洗い方の動画はこちらにまとめています。

 

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クリーニングに出すと、いくら?

すべての着物が「洗えるシルク」ならいいのですが、筆者の着物の多くは従来のもので、自宅クリーニングできず、丸洗いに出します。

着物の洗い方には二種類あって、皮脂汚れなどの油性汚れをきれいに落とす「丸洗い」と、汗など水性の汚れも完全に落とす「汗抜き洗い」や「洗い張り」があります。

お店によって呼び方はさまざまですし、代金もいろいろです。
以下は筆者が現在お願いしているクリーニング料金をそのままお伝えします。

クリーニング代金は必須で、着物のラニングコストと言えるでしょう。

 

 

夏着物のクリーニング代金

夏きもの丸洗い(まるあらい=おもに油性汚れ):8,800円

夏きもの洗い張り(あらいはり=汗抜き&油性汚れ両方の汚れを落とす):9,350円

※洗い張りは、縫い目をほどくので、このあと仕立て代(30,800円)がかかります。

 

洗える着物は、家で丸洗いできるから、これらのコストから解放されるのは、大きなメリットです。

 

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従来のシルク VS 洗えるシルク 縮み方はどれくらい違う?

ここまで、「シルクのきもの=縮む」前提ですすめてきました。実際はどうなのでしょうか?

実は、それほど縮まないものもあるそうです。
検索すると、シルクの長じゅばんを自宅洗濯しているサイトなどもみかけますし、「ほんとは洗ってもいいんじゃないの?」と思う人がいるのも納得できます。

大きな声では言えませんが、実は、以前に筆者も洗濯してみたことがあるんです。

その結果がこれです。

↑この着物は、アイロンである程度は復元できましたが、下の赤系の紬は縮みが激しく、おはしょりのとれない丈になりました。
アイロンをかけましたが、表面のうねりが激しく修復できませんでした。

もしかしたら、こうならない着物もあるかもしれません。
アイロンでうまく伸びる方法もあるかもしれません。

しかし、絹織物は「最大で20パーセント縮む」といわれています。
筆者はもう二度と洗っていません。

改めて、再度検証することにしました。端切れを同じサイズに切りそろえて、水に浸して縮み方を比較します。

上が、従来の着物の生地。下は、「washable加工」済みの生地。両方とも「絽の小紋」です。


まだ水を通したことのない、同じ条件の布を準備。

同じサイズに切りそろえました。1m3㎝です。

水につけます。効果を見るために、あえて時間をおきます。
1時間経過
つるして乾燥させます
乾燥後、床の上に広げます。従来のシルク(上)は表面にややうねりがでました。ぼそぼそとした感じで、光沢がありません。
計測してみると、従来のシルクは2.5㎝縮んでいました。加工している絹は全く縮んでいません。表面のうなりも見られません。

「washable加工」とは、縮み防止だけでなく、光沢感、表面のスムーズさにも影響することがわかりました。

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自宅で洗ってもトラブルない「お仕立て」

自宅で丸洗いするようになると、人任せのときには気が付かなった「着物の型崩れ」が気になってきます。

例えば、裏地が見えてきたり、部分的に縮んだり、生地が歪んできたり。そんなことになったら、きれいに着物は着られません。

筆者は和裁ができませんが、毎日着物を着ているので、仕立てが良いか、悪いかということはわかります。

自宅丸洗い→着付けしてたたむ→自宅丸洗いを繰り返して4シーズンが過ぎました。

今の段階で、従来の着物と型崩れの点においては全く遜色ありません。洗える着物に特化した手縫い仕立ての和裁師さんの仕立てということです。

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 最後にお伝えしたい、【絹】と【洗い張り】のこと

ここまで読んでいただいてありがとうございました。
洗えるシルクの着心地の良さと、楽なお手入れについて、未経験者でもわかるようにお伝えしたつもりでしたが、いかがでしたか?

夏にきものを着ることは、簡単ではありません。
それでも、多くのファンがいるのは、やはり特別な気分になれる魅力があるからです。
最後に、最高の着心地である「絹」の特徴と、メンテナンスに水洗いが必須な理由を、お話しようと思います。

 

 

絹の良さは「着心地の良さ」

ポリエステルと絹の違いについて、どうみられるかについて論じられることが多いかと思いますが、筆者は、機能性の違いの方が重要だと思っています。
「機能性」は「着心地」に直結します。

以下は筆者が日々感じている、絹の着心地です。

歩きやすさ:まとわりつかず、歩きやすい。裾さばきのよさは、絹がダントツ
シルエット:体型に沿うので、麻、木綿に比べて痩せて見える
涼しさ:熱をためこまない、体温が下がりやすい
やわらかさ:なめらかな質感が気持ちいい。肌の弱い人にも適している
フィット感:絹の中でも特に縮緬は収縮性があるので、着崩れが少ない
天然の消臭性:放湿性にすぐれているので、汗の匂いが気にならない

これらの着心地は、絹特有のものです。特にデリケートに傾きやすい夏の肌には、高機能の絹は欠かせません。

 

 

夏きものは毎シーズン「洗い張り」したい!のが本音

着物のクリーニングについては、

コストがかかる
汗シミが残る
色のくすみが気になる

という点は、多くの人がもっている感想だと思います。
特に、汗シミが残るという問題は、丸洗いでは、油性の汚れしか落ちないということが原因です。

すべての汚れを落とすには、すっきりと水洗いする必要があるのです。
他にも、クリーニング特有の匂いは夏に特に気になる、という意見もあります。

これまで、この水洗いとは、「汗抜き洗い」と呼ばれるクリーニング方法。または「洗い張り」しかありませんでした。
いずれにしてもプロ任せです。

「洗い張り」は何度か経験がありますが、ほんとうに着物がきれいになり、すっきりと見違えます!すばらしいです。

でも、反物をほどいて→水と洗剤できれいにし→反物をピンとはって乾かし→縫い直す、という作業は、時間的にもコスト的にもなかなかできることではありません。

本音では、毎シーズン汗をしっかりとる「洗い張り」をしたいんですけどね…

洋服みたいに「汚れたら自分で洗う」というシンプルお手入が自分でできるようになったのは、長い歴史の中で画期的なこと。

これから着物を作ろうと思っている人には、ぜひ、washable加工の「洗えるシルクのきもの」をおすすめします。

 

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製品データ

この記事で紹介した小紋の価格

絽の江戸小紋:113,360円

お仕立て、washable加工:30,240円

合計:133,600円

※2018年5月購入当時の金額です。

購入店:染匠株式会社

着用年数:2018年~2021年8月現在まで

自宅丸洗い回数:6回

 

ウォッシャブル加工について

washable加工は、真空状態の密室で、加圧された純水から噴霧状になったマイクロミストと呼ばれる分子(H2O)を生糸のタンパク質と結合させる技術です。つまり、いったん水と反応した絹糸は、水洗いしても縮まないと言う訳です。同業他社で行われている繊維へのコーティング技術とは違い、フッ素や樹脂などは使用しませんので、washable加工による弊害・副作用はありません。

株式会社染匠ホームページより

 

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記事をご覧いただきありがとうございました。洗えるシルクの夏きものは、あまりに着心地がよいので、翌シーズンまったく同じ生地の柄違いを発注してしまいました。そういうわけで、紬やお召しの夏きものは、まだもっていません。洗えるシルクのきもの、来年は別のタイプに挑戦してみたいと思っています。

コロナ禍となり、「洗いたい。清潔を保ちたい」という気持ちが強くなりました。洋服においても、抗菌加工、防臭加工など、繊維に対してとにかく加工することが大流行しています。

そんな中、洗えるシルクのきものは、新しい時代にフィットした着物と言えます。

この記事の着物は、筆者が仕立てた着物の個人的なレポートですから、製品によっては、織物の特徴により広範囲のアイロンがけが必要なものもあるようです。

洗い方が心配。アイロンのかけ方を知りたい、という生徒さんには、「着物のお手入れ」の一部として講義していますので、お教室にてお知らせください。

筆者プロフィール

着物好きが高じて、DTPデザイナーから着付講師へ転身。年間約8割を着物で過ごしている。2004年より、東京都内にて生徒とのコミュニケーションを大切にした、少人数制の着付教室は現在も進化中。

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