27Dec
初釜ではどんなことをするの?着物と帯はこれで正しいの?初参加の方は、不安なことが多いと思います。ふさわしい着物の種類、帯の種類、着付けのポイント、料理、作法、のし袋、コート、バック、ヘアスタイル、メイク、NG初釜作法について解説します。
初釜の一日の動きを画像付きで説明していますので簡単に予習ができますよ!
目次
初釜とは?
初釜とは、新年お祝いのお茶会。1月10日前後に行われます。家元が開かれる大きなお茶事から、内々で行われるものまで、規模は様々です。
懐石料理~お濃茶~お薄茶という流れで、半日から一日ほど長い時間をかけて過ごします。 招く側が、時間と労力をかけて準備されるお茶事。招かれる方は、そのお気持ちに応えられるよう、きちんとした装いで礼を尽くしたいものです。
初釜タイムスケジュール
初釜当日のおおよその流れです。
10:00 現地到着
10:10 寄付で身支度をして荷物をまとめる
10:20 食事代やご祝儀を係の人へ渡す(準備を手伝う)
10:30 寄付にて白湯をいただく
10:35 つくばいにて、手を清める
10:45 席入り、床の間などの拝見
10:50 新年のご挨拶
11:10 炭手前
11:30 お膳が運ばれてきて茶事のはじまり
13:30 最後に主菓子をいただき、茶席退出
13:40 再度、茶室へ席入り
14:20 濃茶手前
15:15 薄茶点前、歓談
16:30 終了
初釜の一日
実際に画像で説明します。
寄付で身支度をして荷物をまとめる
現地到着。寄付(よりつき)にて身支度をし、荷物をまとめます。
足袋を履きかえたり、茶室に持ち込まない物(コート、バック、お菓子を入れてきた紙袋など)を風呂敷でまとめます。
食事代やご祝儀を係の人へ渡す
その後は先生のお手伝いをする人、着付けを直し合う人、忙しい時間です。質問などあれば、お世話係をしてくださっている先輩へ伺うこと。食事代やご祝儀などもその方へお預けし、まとめて先生へ渡してもらうことが多いようです。
白湯をいただく
席入りの用意が整ったら、一同そろって寄付で白湯(さゆ)をいただき、のどを潤します。
つくばいで手を清める
案内に従って、つくばいへ進みます。両手、口を清めます。
席入り、広間の拝見
新年らしい茶室のしつらえを鑑賞します。床の間、お釜、棚に飾ってあるお茶の道具を拝見。
はじめて先生とご挨拶を交わす瞬間。お招きいただいたお礼や、新年のあいさつなど、心をこめてお伝えしましょう。
炭点前、香合の拝見
絽の炭を直します。
懐石
お料理をのせたお盆を受け取り、茶懐石がはじまります。
懐石で一献。次々にお料理が運ばれます。お酒をいただくことも。
食事が終わり、濃茶のはじまる前にお菓子をいただきます。
中立ち
茶室から退出します。
濃茶点前、拝見
再びお茶室に入り、お濃茶(こいちゃ)を皆でいただきます。
初釜のお茶碗は、お正月にしか使わない豪華なもの。お茶のおいしさとともに、贅沢感を味わいましょう。
後炭点前、薄茶点前
この後は、気楽な場になります。後炭点前、薄茶点前や、お楽しみのくじ引きがあることも。
初釜の流れ、いかがでしたでしょうか?懐石の作法など、細かいルールが多くすぐに覚えらませんが、社中の先輩たちから素直に教えていだきましょう。
初釜の着物
初釜には、準礼装以上の着物に格調高い柄の袋帯を合わせます。最も無難な着物は無地に縫い紋の着物です。 織りの着物は茶席には着ませんが、格調高い紬には例外があります。
訪問着など、柄のある場合は、道具の柄や床の花と重ならないように気を配ります。その席の格、趣旨、連客に合わせ、茶席の雰囲気に調和するような着姿を心がけたいですね。
外を歩くときは、道行コートや着物衿コートなど、礼装にふさわしいコートを着ます。防寒としてだけでなく、塵除けとしても、礼装の時はコートを着るのがマナーです。
お茶室は目線が低いので、袂(たもと=そで)がとても目立ちます。着物と長じゅばんの袖丈があっているか、礼装にふさわしい長襦袢か事前にチェック。長襦袢は淡い色が上品です。
心配なことがあったら、先生や先輩にお伺いしましょう。
初釜の着物と帯の種類
振袖
若い方にお勧めしたい振袖。初釜らしい装い。
訪問着
ふだんのお茶席よりも華やかな初釜は、絵羽模様(えばもよう)のある訪問着がおすすめ。
付け下げ
付け下げも初釜では人気の着物。上の訪問着と同格で、準礼装(セミフォーマル)の着物。
色無地
家紋付きの色無地は、お茶室では定番。こちらは、濃淡あるぼかしの色無地の着物。
江戸小紋
江戸小紋も人気のあるセミフォーマル。家紋のない場合は、先生や先輩に確認してください。
紬の訪問着は?
お茶会では、やわらかい着物がいいでしょう。紬などの固い着物は向きません。
留袖を着て行くのはあり?
格が高すぎるのではないでしょうか?留袖は、第一礼装でなので、訪問着、付け下げ、色無地などの準礼装(セミフォーマル)がよいでしょう。
帯の種類
初釜には袋帯です。袋帯は幅30センチ、長さが4m以上の芯のある帯。模様は格調高い有職文様などがよいでしょう。
長襦袢
長襦袢は淡い色が上品です。お茶室は目線が低いので、袂(たもと=そで)がとても目立ちます。着物と長じゅばんの袖丈があっているかも事前にチェック。
家紋
色無地や江戸小紋を着る場合は、一つ紋(背中の家紋)の着物が良いでしょう。以下画像は、どれも初釜にふさわしい家紋です。
刺繍紋
染め抜き紋
加賀紋
コート
外を歩くときは、道行コートや着物衿コートなどを着用します。
礼装の時はコートを着るのがマナーですが、玄関に入る前にコートを脱いで袖だたみをします。
フォーマル感があるのは、無地やグラデーションのコートです。
初釜の和装小物
ここでは、身に着ける和装小物について説明します。懐紙や茶扇子など、茶室まで携帯する小物については、この後の章で。
草履
筆者が茶会で愛用している草履。台も鼻緒も白なので足元だけ目立つということがありませんし、どんな茶会や着物でも合わせやすく重宝しています。
初釜の草履にふさわしいのは、「台に高さがある」「色が淡い色」「鼻緒の格が高い」礼装用のお草履です。
半衿と足袋
絶対に守りたいのは、真っ白な足袋と半衿。足袋はしわが目立たないように気を付けて。長時間座る前には、一番上のこはぜをゆるめておくと楽です。
足袋カバー
道中は、足袋カバーをはいて汚れ防止。茶室では、真っ白な足袋が必須です。
帯
振袖以外は、袋帯で二重太鼓を結びます。唐織、佐賀錦などがおすすめです。綴れ織(つづれおり)など、格の高いものなら名古屋帯でもいいでしょう。
帯締め
礼装の帯には、礼装用の帯締(おびじめ)を合わせます。
どれが「礼装用帯締」がわからない!という方には…帯締の幅が広めであったり、組みひもが細かく組みこまれている、金銀糸が使用されている。などの点をご参考に。
初釜の着物の着付け
初釜では、正座から立ちあがり、また座る。という動作が多いため、着物の裾が崩れやすいです。長時間の正座に耐え、朝と変わらない着姿を目指し、以下のことに気を付けて着付けをしましょう。
初釜での着物の着付けは、格調高くを第一とすること。趣味やおしゃれ着の着付けではないので、とくに衣紋を抜きすぎるのは上品さに欠ける。茶会では長時間座るので、きものの上前が開きがち。心もち上前幅が広いかと思うぐらいでちょうどよい。下前のすそは、褄上がり12センチほどにして、すそつぼまりの形に。すそはくるぶしが隠れる長さに、白い足袋が少しのぞく程度が歩きやすい。帯は胸から小物の出し入れをしやすくするために、低めに仕上げる。
「お茶のおけいこ」表千家流 世界文化社 きものの客 着付けの心得より
補正タオル
ふだん補正を省略している人も、初釜では補正タオルを入れてください。腰ひもがずれにくく、着崩れを防げます。
ヒップの上にもタオルを入れると、お太鼓のたれが持ち上がりにくくなります。
衣紋
お茶の着物では、衣紋(えもん)は控えめにします。肌が見えすぎないよう、清潔感を。
長襦袢
衿元がはだけやすい人は、長襦袢(ながじゅばん)の衿の重ね方を深くします。
衿元
胸元にいれた懐紙を頻繁に出し入れするので、上前(うわまえ)の衿が浮きやすくなります。襟元のだぶつきが気になる場合は、後ろのおはしょりを下へ引いたり、上前の衿先を加減しながら引くなどして、着崩れを直します。
帯
気持ち低めにしておくと、胸元から懐紙を出し入れしやすい。また、胃の上を圧迫しないように帯の上側はきつく締めないようにする一方、帯の下側(輪になっている方)は締めて身体に添わせましょう。
上前
立居振舞(たちいふるまい)がしやすいように上前(うわまえ=着物の上に重なっている方)少し広めに着付けをします。褄(つま)を上げて、裾広がりを防ぎます。
下前
下前(したまえ)の褄は、12㎝ほど上げましょう。長時間の正座で裾の乱れる方が多いですが、褄を上げて、裾つぼまりに。
腰ひも
裾が崩れにくいよう、腰ひもはきつめにしっかり結びます。腰ひもの下には、補正タオルを入れて、紐がタオルに食い込んでいる状態を作ると、紐が上下にずれることもなく安定します。
いつもゴムベルトを使って着付けをしている人は、茶事の時は、腰ひもをしっかり結んだ方が安心です。
紐の位置は、おへその位置を目安としますが、帯の中に入る高さであること。腰ひもが低いと、茶室では必ず着崩れします。
振り
振り(ふり)が揃うように、袖付けを合わせておくときれいですね。
お太鼓
お太鼓は年齢に合わせます。お太鼓のたれ先が、ヒップの一番高いところを隠すような、お太鼓の高さ(大きさ)が理想です。
ヘアメイクやアクセサリー
ヘアスタイル
衿にかからないようにまとめ、清潔感あるヘアスタイルに。髪を直すしぐさは茶室には不向き。前髪は目にかからないようにセットしましょう。
髪飾り
髪飾りは必要ありません。また、ウィッグなどでボリュームをつけすぎるのも、お茶室では違和感です。
メイクやネイル
茶道では、ネイルをしないのがマナーです。最近は控え目なネイルなら目をつむってくれる先生もいらっしゃいますが、厳しい先輩の視線があることを忘れずに。
リップも控え目に。落ちない口紅もいいですね。お茶をいただくときに、お茶碗に口紅がつかない配慮を。
初釜のもちもの
お茶席に持ち込むものは、数寄屋袋にまとめます。ひとつずつ説明しましょう。
数寄屋袋
数寄屋袋(すきやぶくろ)
懐紙
お茶事に必須な懐紙(かいし)です。食事中、器を清めるため、多めに携帯しましょう。画像の懐紙は、お正月らしい干支の懐紙(かいし)です。他にも、お勅題(ちょくだい)の懐紙なども新年らしさを感じます。
懐紙
扇子
扇子(せんす)は茶道用のものを持参します
替え足袋
汚れた足袋は着物姿を台無しにします。新しい足袋を持参して、お茶室に入る前に履き替えます
袱紗
袱紗(ふくさ)
残菜いれ
お菓子を持ち帰るための防水の袋
大判のハンカチ
のし袋(ご祝儀袋)
会費制のところ、ご祝儀をお渡しするところと様々ですが、同じ金額をお渡しするのが一般的です。表書は、「初釜お祝い」「お年賀」等あります。金額と表書きは、事前にくわしい方から伺っておきましょう。
お年賀のお菓子
こちらも事前に先輩に確認しておくこと。一般的には、お干菓子として使用できるもの。高額すぎない、日持ちするお菓子が喜ばれます。
風呂敷
手荷物をまとめるときに使用します
使用済み懐紙を入れる防水の袋
食事中、懐紙で器を清めます。拭き取った後の懐紙を処理するため、防水の袋があると便利。
ビニールにそのまま入れている方もいますが、筆者は、きんちゃく袋の内側にビニールを重ねています。中身を見せない工夫です。
和風手提げバックまたはサブバック
荷物が増えた場合に便利です。
事前に確認。初釜NG集
柄足袋や柄の半襟
白足袋、白半衿が正式です
伊達衿と刺繍半襟
伊達衿と刺繍半襟も、お茶室ではNGアイテム
幅の狭い着物
初釜では、着崩れしにくい着物や着付けを心がけます。身幅の狭い着物は、どんなにきれいに着付けをしてもらっても、長時間の正座で着崩れを起こします。
派手すぎる変化結び
初釜で振袖を着ていく方は、なるべくコンパクトな帯結びをお願いしましょう。狭いお茶室では壁に帯がぶつかると気になるものです。お太鼓系の変化結びがおすすめです。
指輪、時計
茶道具を傷つけないように。という配慮から、金属などの固いものは身に着けません。
帯留
茶道具を傷つけないよう、帯留もNG
香り
お茶室に余計な香りは必要ありません。香水はもちろんのこと、香りの強い化粧品、整髪料、柔軟剤にも配慮を。普段使っている香りには鈍感になっているものです。あらためて見直してみましょう。
とても気になるのが、和服用の防虫剤の匂い。着物は数日前よりこまめに陰干ししておきましょう。ツンとする匂いは、茶室の雰囲気を台無しにします。アレルギー反応を起こす人もいるくらい強烈です。
ポリエステルの着物やアンティーク着物
ポリエステル着物、古着のビンテージ着物などは、ハレの場にはふさわしくありません。
羽織
茶室だけでなく、一般的な着物TPOとして、礼装の着物の上に羽織は着ないルールです。初釜にふさわしい着物は、準礼装以上ですから、羽織は着用しません。
また、茶室のルールとして、羽織は着用しないということを、初心者の方は覚えておきましょう。
黒の絵羽織は、現在ほとんど着られていません。
知っておくと便利な所作
コートの袖たたみ
コートは袖たたみをします。まずは袖と袖を合わせ、脇縫いを上に揃えて持ちます。裾が地面につかないように、気を付けて!
脇縫いで揃えたら、まずは二つ折り。さらに二つ折りにしましょう。
座布団の扱い方
座布団の受け取り方にも作法があります。
二つ折りの座布団を受け取り、お礼をします。
畳のへり内に、座布団を入れます。
「輪」(正面)を向こう側にして、座布団を開きます。
膝を浮かして、座布団を滑り込ませます。着物の上前が開かないように気を付けます。
以前後ろにひっくりかえった方がいて…着物でこの動きをするのは、難しいかも。と思ったものです。お洋服で練習してから、着物でトライしてみてください!
その他~茶室で気を付けたいこと
歩き方
足の運び、所作を丁寧にすることはもちろん、身幅の浅い着付けは、裾の乱れにつながります。
振りの乱れ
目線が低いので、他人の振り(ふり=袖)がよくみえます。着付けの前に、着物と長襦袢の袖丈寸法がちゃんとあっているか確認してください。
自分の足の形にあった足袋
初釜などのお茶時には、足の先まで気を使いましょう。真っ白な、自分の足に合う足袋を着用したいですね。しわしわの足袋は目立ちます。
お太鼓のたれ先はめくれてない?
立ち座りが多く、お太鼓結びのタレが持ち上がりやすいです。
長襦袢を着る前、ヒップの上に浴用タオルを折りたたんでくぼみを埋めておくといいでしょう。
はじめての初釜へ参加された方からの感想
Tさん
Q:自分で着物の着付けをしましたか?
A:はい
Q:茶席にいる間、気になったことなどありますか?
A:上前が広がりやすい。そのため、動きにくい。
Q:参加してみて、よかったことや、何か発見などあれば。
A:作法の中にある、細かい気遣いや、道具をいたわる動作などの気配に感心した。
Q:次回のお茶会で気を付けようと思ったことはありますか?
A:人の長襦袢がよく見える。ちょっとでもサイズが合っていないと、袖の振りからよくみえてしまう。目線の低い茶室ならではと思う。気を付けなければ。
Q:自分で着物の着付けをしましたか?
A:はい
Q:茶席にいる間、気になったことなどありますか?
A:袖が気になりました。わたしの袖丈は通常よりもちょっと長いのですが、標準丈に直そうかと、検討中。
Q:次回のお茶会で気を付けようと思ったことはありますか?
A:立ち上がる時に裾をふみやすい。実際に踏んで転びそうになっている人もいた。危ない。着付けや動きをもっと学びたい。
Q:自分で着物の着付けをしましたか?
A:はい
Q:茶席にいる間、気になったことなどありますか?
A:着付けに関しては膝部分がはだけやすいので、常に気をつけなければいけないな、という印象です。立ったり座ったり、慣れてるつもりでしたがお茶席では片手の場合や、パランスを取るのが難しく、ふらふらしてしまいます。
Q:参加してみて、何か発見などあれば。
A:着物は滑りやすい縮緬系の方が立ち居振る舞いがしやすいと思いました。
初釜の着物や持ち物の準備とともに、気を付けたいのが体調管理。
初釜は、先生が何日もかけて準備してくださる大事なお茶会。招かれる側とはいえ、それぞれに役回りがあり、人数に合わせてすべての準備が行われています。基本的な決まり事として、参加のお返事をしたら、欠席しないことがマナーです。
体調も万全にして、当日楽しんでくださいね!
筆者プロフィール
着物好きが高じて、DTPデザイナーから着付講師へ転身。年間約8割を着物で過ごしている。2004年より、東京都内にて生徒とのコミュニケーションを大切にした、少人数制の着付教室は現在も進化中。