14Jan
草履には、フォーマルとカジュアルの区別があり、見た目がまったく違います。着物は礼装なのに、足元がふだんのもの。ってすごく目立ちますから、失敗したくないですよね?この記事は、その違いを詳しく説明します。
その他、痛くない草履、使いやすい草履の選び方、歩き方、雨の日に気を付ける事など着物の時の履物についてお話しします。
目次
フォーマル着物の草履
結婚式など、ヘアメイクもきちんとして、訪問着。というような時は、やはり足元(お草履)もそろえます。
着物ルールでは、正式な場所の草履は裂地かエナメル。他にも、草履台が高く、鼻緒に高級感があること。色は、金、銀、白、または白っぽいものと決まっています。
フォーマル草履を上からみたところ。金の草履台に、金彩の鼻緒です。結婚式や式典など、華やかなフォーマルの時に履いています。
フォーマル草履を横から見たところ。草履台の高く、6㎝くらいあります
草履台は、金の細かいラメが入っています。
こちらもフォーマルの草履。シンプルな白い草履台と鼻緒です。お茶会など、地味めな礼装の時に履いています。
草履台は、白のエナメル。真っ白は格の高い色です。
カジュアル着物の草履
紬や小紋、綿や麻の着物には、カジュアル草履を合わせます。
フォーマルとカジュアルの違い
ちょっとしか見えないんだから、大したことないんじゃない?と思っている人。いえいえ、おしゃれ用の草履を礼装に履くと目立ちますし、トータルコーディネートとして違和感があります。事前チェックは必須です。
草履台の高さの違い
草履台の高さの違いを比べてみましょう。上の草履はカジュアル用で3㎝です。下の草履はフォーマル用で6㎝あります。この写真の草履はかかと2段ですが、かかと3段のものがあり、いずれも台の高さが特徴。
鼻緒の違い
フォーマル用草履には、格高の豪華な鼻緒がついています。金銀彩の帯地のような柄が多いです。
色の違い
フォーマルは、金、銀、白または薄い色、パール感のあるもの。
カジュアルは、薄い色から濃い色までさまざまな色があります。この写真のような濃い色の草履は、カジュアル専用で、季節は秋冬向き。
振袖の草履を訪問着で履いてもおかしくない?
断定はできませんが、振袖と大人フォーマルである「訪問着」「付け下げ」「色無地」は合わせる和装小物や草履が違うことが多いです。
同じフォーマルだから、大丈夫。と決めつけないで、詳しい人に確認してもらった方がいいでしょう。
両用できる、ちょうどいい草履
筆者が、一年を通して一番よく履いている便利な草履は、白っぽい草履台+織柄の鼻緒です。このタイプは、以前履物屋さんで、「小紋から訪問着まで合わせられるよ!」とすすめられ、実際にお茶のお稽古へも、式典でも履いています。
履物は、格が高すぎたり低すぎると、ポイント使いとなり、結果、使用頻度が下がります。
履物はたくさんの種類があります。シーンに合わせて、いろいろあればいいけども、そんなに数を増やすわけにはいきません。わたしたちの下駄箱には、スニーカーやパンプス。サンダルもありますから。
このように淡い色の草履台は、フォーマルとカジュアルに幅広く使用できます。どの季節でも違和感なく、どんなコーデとも無難にマッチし、着物の色を選びません。はじめの一足として、おすすめします。
草履のサイズ
草履のサイズは、靴のように細かくわかれていません。メーカーにもよりますが、だいたいが、S、M、L、LL、フリーサイズとなっています。
Mサイズ…23.5㎝くらいまで
Lサイズ…24センチ以上
試着させてもらって、台のフィット感、鼻緒のきつさを確認すると安心です。
お手入れ方法
帰宅したら、草履台をさっと拭いておきましょう。
着物の時の歩き方
草履は地面と平行に。足全体で地面を踏むのが正解
「ぱたぱた音がなって気になる。」「足が痛い」という人は、歩き方を見直してください。動きもきれいに見えます。
- 自分の前に一本の線があるように意識して、足を運ぶ。
- 足裏全体が地面を滑るように。
- 踏み出すのも、着地も、足裏全体で。
- つま先を内側に向けて、歩幅は小さくすると優雅に見えます。
- 膝と足首を柔らかく。
和の歩行はすり足、内股と言われます。つま先重心の日本人には、この歩行の方が合っていると言われています。
草履の耐用期間
このお草履は、15年もの。バラバラ寸前、かなり危険な状態
ばらばらになってしまった草履台
耐用期間の過ぎているお草履は外出先で分解の可能性!?こんなことにならないよう、しばらく履いていない草履は、試し履きしてお出かけしましょう。
痛い鼻緒と・心地良い鼻緒の違い
指の間が痛い時は、鼻緒に原因があります。ふっくらと柔らかい鼻緒は、痛くありませんが、昔風の固くて細い鼻緒は痛いです。
心地良い鼻緒はふっくらと足を包んでくれます
痛い鼻緒は細くて硬い
鼻緒のすげ方がキツイのも、痛くなります。引っ張ってゆるめるか、草履店へ持ち込んで緩めてもらいます。
このように、鼻緒についている紐をしめたり緩めたりして調整してもらえます
歩きやすい草履
草履台にクッションが入っていて柔らかいもの、草履台にほどよい傾斜があるものが歩きやすいです。
痛い草履を買わないために
足に合っているものなら痛くありません。購入前に試し履きするのが一番です。
足の形は個人差があります。甲高さん、逆に薄い方。幅広さん。指の厚みがある、ない。など。靴でもトラブルの多い人は、草履でも痛い思いをすることが多いです。
筆者は自分で鼻緒を調整しますが、気になる方はネットで購入せず、プロに見てもらって、鼻緒を調整してもらってください。
・幅広さんは、鼻緒を「ゆるめ」てもらう
・甲高さんは、「ゆるめ」てもらう
・甲薄さんは「きつめ」にしてもらう
応急処理として、鼻緒が痛い時は、草履台と鼻緒の間に手をいれて、引っ張ってゆるめます。
下駄は、夏だけじゃありません
足袋を履いて、春でも、秋でも、冬でも
草履ではなく「下駄」ですが、足袋を履けば、小紋や紬、綿の着物で通年履くことができます。しかも、軽くて歩きやすく、ちょっとした雨でも耐えてくれる下駄。夏以外でも、もっと活躍させたいですね。
雨の日用の草履カバー
雨の日は草履カバーをして、濡れるのを防ぎます。
雨の中を歩くと、底からしみてくるので注意です。草履カバーは、お草履を底からくるんで、ぬれないようにするためのもの。
こちら、装着した状態です。
草履は底面に穴があいていて(普段はふさがっています。)鼻緒をゆるめたり、取りかえたりすることができるようになっています。完全に一体化されていません。そのため、このような草履カバーが必要なのです。
草履の底。ここから雨がしみてきますよ~
万が一、草履が濡れてしまったら、割りばしの上にお草履をのせて通気性をよくし、湿気を飛ばしましょう。底が皮なので、そのまま放置しないでくださいね。
草履や下駄は左右が決まっている?
いいえ。決まっていません。草履や下駄は左右対称ですから、時々交互に履き替えるようにすると底の減りが偏りません。またそのことが、体の左右バランスを修正するはたらきもあるのです。
畳表は履きやすい?
カジュアル用、畳表のお草履です
畳表(たたみおもて)の草履、好きです。デザインが可愛いですし、人気があり、よく質問も受けます。
以下は、筆者の体験と個人的な感想です。ご参考までに。
着物を日常で着るようになった最初のころです。「やわらかくて履きやすいよ、礼装まで履けるよ」と言われて買いました。でも私が履くと、つるつる滑って脱げてくる。進めません。式典でもお茶事でも、畳表の草履を見たことがない。「どういうこと?高かったのに!」
実は、唯一、しまいっぱなしが「畳表の草履」です。
先日、葛飾区の古い履物屋さんに立ち寄り、ご主人とお話をしました。思い切って、「畳表の草履」のこと、尋ねてみました。ご主人がいうには、「流行ったよね、数年前。でもうちは仕入れなかったよ。だって、難しいからね、履きこなすのが。」と、さらっと流されました。
代わりに見せてくれたのが、ご主人愛用の畳表。つやつやと光り、何とも貫禄と品格がありました。「畳表は達人の履物」と思ったエピソードです。
フォーマル草履として履いてもおかしくないか?についてですが、履物TPOを調べると、畳表はフォーマル草履に分類されます。男子の第一礼装は雪駄=畳表ですし、映画などを見ていると、東京オリンピックの頃とか、礼装の着物に畳表の草履、お母さんたちが履いています。もちろん今でも履いている方はいるのでしょうが、現代のTPOではもう一般的ではないのかもしれません。
この記事では書ききれませんが、履物の世界は奥が深いです。鼻緒の調整の方法は、今と昔は違うと言いますし、日本人の体型や歩き方は、昔の人と現代のわたしたちでは全然違います。そういうことを無視して、簡単に履物のことは語れないのだと、畳表の草履を通じて思いました。
でもあきらめたわけではありません。今度、プロに鼻緒調節をしてもらって再挑戦するつもり。その場で足に合わせてこそ本領を発揮するという職人さんもいますからね。かわいい畳表をあきらめたくはありません。
最後に、達人の鼻緒調整の仕方です。
草履をしばらく履いていると、少しずつ「つぼ」(鼻緒と前方の接合部分)が出てくる=鼻緒がゆるみます。ゆるんだら職人さんに締めてもらうというのが、達人の草履の履き方。ね?違いますよね。
20代の頃、母の草履を履いて一日痛みをこらえていたことは、にがい思い出として、強烈に残っています。昔のお草履の中には、ものすごく鼻緒の痛いものがあり「履いているうちに、やわらかくなるから。」と言われたものでした。今では、最初から楽なお草履がほとんど。いい時代です。
草履は正しく選び、履き方と歩き方を覚えれば、微妙なフィット感を大切にする足にやさしい履物。前重心の日本人に合っている履物ともいわれています。正しく選んで履きこなしたいですね。
筆者プロフィール
着物好きが高じて、DTPデザイナーから着付講師へ転身。年間約8割を着物で過ごしている。2004年より、東京都内にて生徒とのコミュニケーションを大切にした、少人数制の着付教室は現在も進化中。